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東京地方裁判所 昭和40年(ワ)6487号 判決 1967年4月25日

主文

一、被告は、原告に対し金四、〇九六、六〇一円及びこれに対する昭和四〇年八月一六日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

二、訴訟費用は被告の負担とする。

三、この判決は原告が金一、〇〇〇、〇〇〇円の担保を供すれば仮りに執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は、主文第一、二項同旨の判決、並びに仮執行の宣言を求め請求原因として次のとおり述べた。

一、被告は、各種熔接材料の販売を目的として設立された訴外協進熔材有限会社(以下訴外会社という)の設立当時よりの代表取締役であり、原告会社は、工業用ガス並びに熔接機材の販売を業とするもので、訴外会社とは前記熔接材料の供給について取引を為し、右取引に基く売掛残債権額(合計金四、〇九六、六〇一円)の内容は左のとおりである。

原告会社江戸川営業所が、訴外会社に対して昭和三九年八月二二日より同年一〇月二九日までの間に納品した電気熔接棒三、四六〇キログラム並びに熔接器外九点の価格合計金四〇九、九三〇円及び原告会社が訴外会社に対して昭和三九年八月三〇日より同年一〇月二〇日までの間に納品した酸素ガス六、五五三立方米の代金三六五、〇三一円と以上の他既に前記の如き取引の代金の弁済の方法として訴外会社より受け取り、支払の呈示をなして拒絶された別表(一)、(二)記載の約束手形、二六葉合計三、三二一、六四〇円。以上総計金四、〇九六、六〇一円。

二、原告会社と訴外会社との取引は当初より被告個人の信用を背景にすすめられてきたものであつたが、訴外会社は、昭和三九年一〇月三一日銀行取引停止処分をうけ、遂に倒産したため、原告会社は、訴外会社との取引に基く前記売掛残債権額合計金四、〇九六、六〇一円の損害を受けた。

三、(一) 被告は、訴外会社の代表取締役就任時より同会社の業務並びに経理の内容については一切関与せず代表者職印も取締役の一人である訴外細谷正憲に預け、そのすべてを同人に任せぱなしにし、被告より一切を任せられた右細谷は、放漫ずさんな経営をしたため遂に訴外会社は破産するところとなつたのであるが、右細谷の放漫経営に全く監視の義務を怠つた被告は、代表取締役としての職務を行うにつき重大な過失があつたというべきである。

(二) 被告は、訴外会社と同種営業を内容とする株式会社東洋製作所の代表取締役であつたが、同社が、訴外会社に売掛けた代金債権を回収するに当つて、訴外会社の地位を利用して他の債権者に優先してこれをなしたものであり、自己の利益にのみ代表取締役の地位を利用した被告は、結果的には他の債権者の犠牲において不当な利益をあげたもので、以上は被告が代表取締役の職務を行うについて故意(悪意)があつたというべきである。

四、したがつて被告の右行為は、訴外会社の代表取締役としての職務を行うにつき悪意又は重大な過失があつたものであるから被告はこれがため第三者である原告会社が被つた前記売掛残債権額合計金四、〇九六、六〇一円の損害を賠償する責任がある。

五、よつて原告は被告に対し、前記損害金四、〇九六、六〇一円及びこれに対する訴状送達の翌日である昭和四〇年八月一六日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

証拠(省略)

別紙

別表(一) 約束手形一覧表

<省略>

<省略>

別表(二) 約束手形一覧表

<省略>

<省略>

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